ヨーロッパで最も権威あるカメラ賞のEISAアワードが発表された
ヨーロッパ20カ国でカメラやオーディオなどの専門誌約50誌が加盟する団体「EISA(Europian Imaging and Sound Association)」がEISAアワード2014-2015を発表しました。このエイサアワードはヨーロッパで最も権威ある賞として有名で、過去のカメラ名機ももれなく受賞しています。
気になる日本勢は、なんと全16部門のうち14部門でアワードに輝きました。受賞を逃したのは、Wifiなどを通じて外部機器とカメラを連動させて利用するコネクトカメラ部門とフォトアクセサリー部門です。それぞれ、韓国のサムスンとイタリアのマンフロットが受賞しています。
16カテゴリの写真賞と受賞製品(メーカー) | |
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European Photo & Video camera 2014-2015 | LUMIX GH4(パナソニック) |
EUROPEAN COMPACT CAMERA 2014-2015 | Cyber-shot RX100 III(ソニー) |
EUROPEAN PROFESSIONAL COMPACT SYSTEM CAMERA 2014-2015 | α7R(ソニー) |
EUROPEAN ADVANCED DSLR CAMERA 2014-2015 | PENTAX K-3(リコーイメージング) |
EUROPEAN ADVANCED COMPACT SYSTEM CAMERA 2014-2015 | X-T1(富士フイルム) |
EUROPEAN TRAVEL COMPACT CAMERA 2014-2015 | LUMIX DMC-TZ60(パナソニック) |
EUROPEAN ADVANCED COMPACT CAMERA 2014-2015 | LUMIX DMC-FZ1000(パナソニック) |
EUROPEAN CONSUMER COMPACT SYSTEM CAMERA 2014-2015 | OM-D E-M10(オリンパス) |
EUROPEAN PROFESSIONAL DSLR CAMERA 2014-2015 | D4S(ニコン) |
EUROPEAN CONSUMER DSLR CAMERA 2014-2015 | Canon EOS 1200D(日本モデルはEOS Kiss X70)(キヤノン) |
EUROPEAN CONNECTED CAMERA 2014-2015 | NX30(サムスン) |
EUROPEAN COMPACT SYSTEM ZOOM LENS 2014-2015 | M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8(オリンパス) |
EUROPEAN DSLR ZOOM LENS 2014-2015 | 16-300mm F3.5-6.3 Di II VC PZD(タムロン) |
EUROPEAN DSLR LENS 2014-2015 | 50mm F1.4 DG HSM [A](シグマ) |
European Compact System Lens 2014-2015 | フジノンレンズ XF56mmF1.2 R(富士フイルム) |
European DSLR Telephoto Zoom Lens 2014-2015 | SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD(タムロン) |
EUROPEAN PHOTO ACCESSORY 2014-2015 | MT055CXPro4(マンフロット) |
EISAアワードの発表をうけてキヤノン、パナソニック、SONYがこぞってプレスリリースを発表し、グランプリ受賞をPRしていることからもカメラメーカーにとってこの賞に意味があることを証明しています。世界で日本の存在感が薄れつつあるなかで、カメラ関連業界における日本メーカーの際立った活躍はとても喜ばしいことです。
EISAアワードで受賞したカメラやレンズの傾向
EISAアワードは、映像関連の商品を16のカテゴリにわけて、そのカテゴリを代表する商品に贈られる賞です。今年の受賞の傾向を見てみると受賞メーカーはパナソニック、ソニー、キヤノン、オリンパス、ニコン、富士フィルムと主要メーカーは何かしらの商品で受賞しています。
個別の賞を見てみると、レンズ部門ではシグマのART 50mm F1.4 DG HSMやタムロンのSP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USDなど確かに日本でも話題となった商品がグランプリを受賞しています。カメラ部門でも同様に、今年3月に発売されたプロフェッショナル向けデジタル一眼レフカメラD4s、キヤノンのエントリーモデルEOS Kiss X70が受賞しておりこちらも順当ですね。
日本にもカメラグランプリはあるけど、権威があるとは思えない
日本にもカメラやレンズにアワードを贈る仕組みはあります。その1つがEISAと同じく雑誌から派生した「カメラグランプリJAPAN」です。主催はカメラ雑誌の記者たちが作るCJPCという業界団体です。毎年1回、その年を代表するカメラやレンズにグランプリを贈呈します。
このような賞を贈るには、その賞に権威性がなければ賞の存在意義が失われてしまいます。映画業界ではオスカー賞やグラミー賞、本では芥川賞や直木賞があるように、受賞した商品や作品は受賞した時点で品格が1段上がる必要があって、学校の優秀賞とは格が違います。ではその賞の権威性を保つのは、だれでもない主催者次第だと思います。
誰に褒められても嬉しいものの受賞が他の製品やメーカーとの差別化になるためには、権威性が最低条件で受賞者はもちろん一般社会に知らしめる役割を担うのが主催者です。受賞者が受賞したことを公表するのは、あくまでも受賞した喜びがあるからであって日頃から賞の存在意義を保つのは主催者にかかっています。
では、その役割を担う日本とヨーロッパの主催者はそれぞれ役目をしっかりと果たしているのか気になります。例えば、インターネットを通じた広報活動の積極性などはその指標となりそうです。そこで、日本のカメラグランプリJAPANとEISAのインターネットを通じた広報活動を見てみたいと思います。
カメラグランプリのインターネット活用は最低だとおもう
最初に申し上げておくと、EISAやカメラグランプリにとってインターネットを活用することが目的ではありません。ただ、情報伝達や広報活動の手段としてのインターネットの重要性はカメラメーカーもわかっています。雑誌団体だからといって、そこを無視できるほど小さな効果しかない手段ではないはずです。
8月なのに、まだ雪模様のページ構成にもうやる気の無さがにじみ出ています。もちろんTwitterやフェイスブックのようなソーシャル性はありません。最終更新は3ヶ月前が最後で、5月に発表したカメラグランプリの結果が出ているだけです。かなり閉ざされた世界でグランプリが開催されているように見えます。
デザインだけ比較しても、全くやる気のない日本のカメラグランプリとEISAの違いは明らかです。運営事務局がしっかりと機能していないだけでなく、名ばかりのグランプリだというのがよくわかります。露出先は自分たちの雑誌とメーカーから発表される受賞の声だけで充分だと思っているのでしょう。
一方EISAのサイトがこちらです。日本のカメラグランプリと違って、最新のWEB技術を使って各種ソーシャルメディアとの連動も強く、情報を発信するという姿勢が見えます。この賞のノミネート方法や選考過程も開示されていて、オープンなかたちでこのグランプリが開催されているように見えます。
カメラ業界は外部環境も危機感をもったほうがいい
美しい商品に贈るグッドデザイン賞は賛否両論あるものの、一般社会への浸透は成功している事例です。本屋が選ぶ本屋大賞は本屋の店員が選ぶという新しい書籍グランプリを生み出しました。いずれも共通しているのは主催者の一般社会への情報発信と広報活動が実った結果です。受賞者がかってに宣伝してくれると勘違いした賞ではなく、主催者の活動によるものです。
カメラの普及と活況には、カメラメーカーが単独で努力しても実りません。それを普及させるためのメディアも同じ危機感の中で、変わらなければいけないと思っています。このグランプリの運営もそのひとつです。中途半端な賞は、カメラ業界全体をむしばんでいくはずです。カメラメーカーがどれだけ優れたカメラを投入しても中途半端なグランプリに輝いても、その輝きはすぐに消えてしまいます。
カメラやレンズメーカーは切磋琢磨しながら世界によりよい製品を投入し、それをカメラグランプリ主催者側は正当に評価し、その受賞は世間一般にも広がることで、グランプリ受賞製品がより販売数が増えるような仕組みにして欲しいものです。