D4sをもって廃墟撮影へと向かう
中国上海に、近隣住民が誰も寄り付かない見捨てられた場所がある。万博会場の跡地が、まるでゴーストタウンだった。この場所をみつけたのは、偶然バイクで通りかかっただけである。バイクで商店街を走っていると商店街を抜けたあたりで突然、ひとの気配がなくなった。それでもアクセルを踏んで進んでいくと、そこは悪臭と崩壊した家々が密集する見捨てられた街だった。決して足を踏み入れてはいけない雰囲気が無言で押し寄せてきたが、廃墟撮影の侵入取材を開始した。
廃墟撮影に適したゴーストタウンの入り口。一人で入るのは少し気が引けたが、D4sの描写性能を探るためにも勇気を出して入ってみた。ちょっと白飛びし過ぎてる感じがするけど。
入るなり、むき出しになった寝室が目に飛び込んできた。腐りかかった一脚の椅子は、いったいどこを向いているのだろうか。
寝室を出ると、全てが壊された廃墟への道へと進む。鼻にまとわりつく匂いと、コンクリートの壁だけが未だに健在と言わんばかりに威圧感を放っていた。
D4sも震えそうなくらいのゴーストタウン
これを廃墟と呼ばずしてなんと呼ぼうか。全ての天井は崩壊し、外壁すら粉々になっている。ひとが住まない街になって何年たつのだろうか。
ひとがいなくとも、植物だけは平然と生き続けていた。この扉を開けて侵入しようとしたのだが、鍵がかかったままだったので入れなかった。
このあたりはマンションが立ち並ぶ地域だったのだろうが、ここから先へは誰も踏み入ることはできない。
街の最北端でへ行くと、壁を挟んで反対画は人が住む街が見えた。この壁が生きる街と死の街の境目だった。
ここはどんな部屋だったのだろうか、予想もつかないほどのただの空間と化していた。
最後に郵便物が運ばれたのはいつだろうか。固く閉ざされた郵便受けは、この街で唯一色彩を放っていた。
今にも崩れそうな家屋へ登り、窓から撮影した。目の前の家は火災に見舞われたのだろうか、家財道具や壁一面が黒く焦げていた。
トタン屋根は崩れ落ち、水道は役割をなくし、悪臭だけが漂うゴーストハウスだった。
廃墟撮影を終えて:
撮影時も執筆時も、国際都市上海が魔都上海と呼ばれる理由を考えていた。この街から何キロも離れていない場所で、数年前に万博が開かれていたのは紛れも無い事実である。その頃、この街は生きていたのだろうか、もしくはこのままの姿だったのだろうか。街全体が廃墟と化した魔都上海はまさしく魔物が住んでいる。まるでホラー映画のような文章になってしまった。
撮影器材:
Nikon D4s
SIGMA 35mm F1.4 DG HSM