ここ最近、家電量販店のデジカメ展示コーナーのカメラは価格帯が上昇傾向にあると思いませんか?
数年前なら小さいカメラは安いという相場が決まっいて3万も出せばスナップ撮影にはぴったりのコンパクトデジタルカメラが手に入りましたし、展示コーナーの中央にはこの種のカメラが色とりどり並べられておりました。
この高級化路線の要因は「高級コンデジ」という新しいカメラのジャンルで、デジタル一眼レフでもなくミラーレス一眼でも無いコンパクトデジタルカメラの進化形態のひとつなのです。プレミアムコンデジやハイエンドコンデジと呼ばれる事もあります。
なぜ高級コンデジが売れてるのか?
高級コンデジが売れているか否かの前に、なぜ高級コンデジというジャンルが生み出されたのかを考えてみます。
iphone等の高機能カメラを搭載したスマートフォンの台頭で、差別化できないコンデジは市場から駆逐され市場が無くなってしまったため、打倒スマートフォンカメラで作られたのがこの高級コンデジです。スマートフォンとの差別化を考えて行き着いた先が高級コンデジというひとつのジャンルなのです。
大雑把にカメラを3つに分類すると、以下のような表になります。端的に言えば重さと画質はトレードオフの関係にあるということです。コンパクトデジタルカメラ(通称コンデジ)は、軽くて小型である代わりに画質はデジタル一眼レフやミラーレスカメラに比べると劣るわけです。スマホカメラもコンデジと同じで、軽い(というか付いてる)代わりにレンズ交換は出来ず画質もそこそこ。スマホカメラはスマホの付属品ですので、スマホが普及すればするほどわざわざコンデジを買う人が減少するのは当然です。
画質 | 重量 | レンズ交換 | 背景ボケ | |
デジタル一眼レフカメラ | ○ | × | 可能 | ○ |
ミラーレスカメラ | ○ | ○ | 可能 | ○ |
コンパクトデジタルカメラ | × | ○ | 不可能 | × |
スマホとコンデジの画質は同じってこと?
スマホが売れてコンデジが売れなくなるということは何となく理解できます。ということは、スマホとコンデジを比較した場合、機能や特徴が似てるのは分かったけれども画質が全く同じって事なのでしょうか?もちろん、カメラ単体のコンデジとスマホ付属品で比べればもちろんコンデジに軍配があがります。
がしかし、その画質を気にするような人はより画質の良いカメラを持っている場合が多いでしょうね。わざわざスマホカメラ+コンデジという人はほとんどいません。
従って、画質の差はあるけれどもそこがコンデジとスマホを競合させているわけではなくて、レンズ交換が出来ないとか背景がボケづらいといった明確な違いが無いためスマホがコンデジのメリットを全て飲み込んでしまっているのですね。
さらに、例えば昼間に撮ってSNSサイトに投稿する程度であればスマホでもコンデジでも画質の差は見分けられません。
こうなると、もはやコンデジのポジションはスマホに食べられてしまうわけです。
コンデジが生き残る術はあるのか?
先ほどの表にスマホカメラを追加したものが下の表です。
画質 | 重量 | レンズ交換 | 背景ボケ | |
デジタル一眼レフカメラ | ○ | × | 可能 | ○ |
ミラーレスカメラ | ○ | ○ | 可能 | ○ |
コンパクトデジタルカメラ | × | ○ | 不可能 | × |
スマホカメラ | × | ○ | 不可能 | × |
スマホカメラの下克上によってコンデジの立ち位置はもはや消滅しつつある中で、コンデジがカメラ業界で生き残る隙はあるのでしょうか?携帯性はスマホの一人勝ちですし、デジ一やミラーレスの特徴であるレンズ交換が出来ないコンデジにとって進化の余地は唯一、画質の進化しかありません。スマホカメラの携帯性という圧倒的な地位とデジタル一眼レフの圧倒的な画質に挟まれたコンデジが生き残る道は、その両者とうまく距離を保つ高画質なコンパクトデジタルカメラという道だけが残された道なのです。
スマホと両立する高級コンデジ
高級コンデジの登場でスマホのお手軽撮影と高級コンデジの本気撮影という棲み分けができるようなり、カメラ市場における高級コンデジの存在感は増すばかりです。CANON、NIKON、SONY、PENTAX、OLYMPUS、RICOHといった主要カメラメーカーがフルラインナップさせています。
高級コンデジの特徴とは?
2014年6月時点での高級コンデジにカテゴリされる機種は約60機種程度あると言われています。高級コンデジは従来のコンデジに比べて「撮像センサー」「画像処理エンジン」「レンズ」全てにおいて進化しています。全体的な傾向としては、比較的大型のセンサーを搭載するモデルは単焦点レンズ、比較的小型なセンサーを搭載するモデルはズームレンズといった画質重視派の高級コンデジと機能派と二分化しているようにも見えます。評価の高いGRなどを使ってみると、APS-Cセンサーのデジタル一眼レフをレンズキットで使ってるユーザーにとっては、高級コンデジのほうが手軽に持ち出せて綺麗な写真が撮れるのではないかと思ってしまうくらい高性能です。
各社の主要な高級コンデジをピックアップしてみました。
CANON PowerShot G1 X Mark II
SONY DSC-RX100M2
NIKON COOLPIX P340
CASIO EXILIM EX-100
PENTAX MX-1
RICOH GR
カメラ関連市場の盛り上がりはスマホのおかげ
スマホの台頭で、特にコンデジが売れなくなったのは事実です。しかし、スマホを含めたカメラ関連市場を見れば活況であることがよくわかります。先ほどの高級コンデジという新しいジャンルが生まれたのもスマホの存在が起因していますし、instagramのようなカメラアプリも女子カメラ関連市場もしかりです。今までカメラで撮影することに縁もゆかりも無い人たちがスマホで写真を撮ることがきっかけでカメラに興味をもったのです。スマホカメラがきっかけで、高級コンデジからミラーレスやデジタル一眼レフへの需要喚起が生まれてるわけです。
巷では、スマホのせいでカメラ市場が衰退していると言われていますが、むしろ逆にスマホがきっかけで新しい購買層が生まれているのではないでしょうか。もちろんコンデジという競合ジャンルの商品にとってはマイナスの影響がありますが、カメラメーカー以外も含めたカメラ関連マーケットは広がっていると考えています。