上海市内にあるカメラ博物館は、正式名称「上海老相機製造博物館」といいます。漢字から想像がつくとおり、アンティークカメラ、オールドカメラの博物館です。アンティークと言っても、ドイツ、ロシア、日本のカメラが展示されているわけではありません。中国各地で60〜70年代に製造されていたカメラが中心です。
中国製カメラでピンとくるメーカーはほとんどありませんが、全国各地にカメラメーカーは存在していたようです。ブランド育成には弱い国ですから、そのままフェードアウトした企業ばかりです。展示製品は、アンティークカメラやオールドレンズとその設計図、当時の写真と撮影風景の模型などが展示されています。
実際に博物館の中を覗くと「海鴎ブランド」製品が中心でした。それもそのはず上海の地元カメラブランド・海鴎の工場を併設するカメラ博物館だからです。日本人には馴染みが薄い海鴎(はいおう、かいおう)、中国を代表するカメラメーカーで50年以上の歴史を持っています。製造しているのは主に二眼レフカメラで、ミラーレスやデジタル一眼レフカメラのメーカーではありません。
海鴎ブランドの歴史をもう少し紹介します。戦後間もないころ、世界のカメラ市場で輝かしい功績を残していたのがドイツのライカ社です。特に、ライカのM3というカメラは精密機械の極みと呼ばれており、世界中のカメラメーカーのベンチマークとされていました。
この頃、日本メーカーの技術ではこのライカM3をコピー製造することすら出来ませんでした。そしてまるでこのM3とライバルになることを避けるかのように、日本メーカーは一気に一眼レフカメラの開発へと進んでいきました。そんな日本メーカーを横目に中国のカメラメーカー海鴎はM3に果敢に勝負を挑みました。
しかしこの勝負にはエピソードがあります。M3に挑んだのは営利目的ではなく、国威発揚のためなのです。1969年に建国20周年を記念して企画開発されました。ライカM3に比肩するカメラを製造すべしと海鴎に命じたのは、時の国家主席毛沢東の夫人であった江青です。彼女の指示を受けて1971に発売されたカメラがM3と類似設計の「紅旗20」です。
そんな逸話をもつ海鴎が発売した紅旗20は結局300台ほどしか製造されていません。海鴎が中国国内で有名になったのは、二眼レフカメラの一連の製品です。二眼レフカメラは上の写真のようにファインダー用のレンズと撮影用のレンズが上下に配置されたカメラです。レンズ交換もできませんし、ズームレンズもありません、もちろんデジタルカメラではありません。なので、今から入門機として使うにはハードルが高いですが、趣味性の高いカメラとして一部では人気があるカメラです。
話を博物館に戻します。入場料は無料で、広さはゆっくり見ても30分ほどで一周できる大きさです。ここでカメラやお土産は売ってません。ただ見るだけです。案内は中国語と英語のみです。外国人の観光客が非常に多いのが特徴で、この日も親子連れの欧米人が何組もいました。上海観光で暇すぎたときにでも足をお運びください。
上海老相機製造博物館(SHANGHAI MUSEUM OF OLD CAMERA MANUFACTURING)
住所 | 上海市重慶南路308号1階 |
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電話番号 | 021-6246-2064 |
営業時間 | 10:00-16:00 |
休業日 | 月曜日 |
クレジットカード | 不可 |
駐車場 | 無し |
日本語 | 不可 |
入館料 | 無料 |