いまから2年前、AV女優の本田岬がクラファンに登場した。本田岬がAVを引退するにあたって最初で最後の写真集を制作するという企画だ。
最終的な結果としては、目標250万円に対して支援総額500万円を超える大成功となった。総支援者数も160人を超えて、大成功といえる。
いまでこそクラファンは市民権を得ているが、当時は誰もが使うサービス・プラットフォームとは言えず、その時期での大成功は非常に興味深い。さて、本田岬のクラファン企画がなぜ成功したのか、その成功要因を3つにわけて考えていく。AV女優のクラファン企画は、失敗も多いのが実情だ。それはAV女優としての人気に比例して成功確率が上がるわけではない。クラファンに対する考え方や、支援してくれるファンの支援金の使いみちが大きく左右する。
1.本田岬初のクラファンのためだけに作る写真集
これがクラファンのあるべき姿であり、本来の姿である。例えば、本田岬とは別のAV女優がクラファンを立ち上げていた。それは、撮影はクラファンを立ち上げる前に終わっており、ただ写真展を開きたいというクラファンだった。クラファンの趣旨を少し読み違えたような企画で、結果としては失敗に終わった。何かを生み出したい、でも支援がなければ自力では達成しづらい。という趣旨に対して、最初から出版予定の撮影済み写真集をクラファンに載せる意味があるのだろうか?その点、本田岬の写真集企画は健全だ。この企画のために新たに撮り下ろし、さらに一般流通には載せないと断言している。あくまでも、クラファンで購入してくれた人たちだけに向けた最初で最後の写真集なのだ。一般流通に載せないのだから、ビジネス的には上限(支援金額)が見えてしまい面白みがないかもしれない。しかし、クラファンとしては大成功となった。
2.本田岬ファン心をくすぐる適切なリターン設定
一番安い支援金額は2000円で、手頃だ。ただ、手放しで喜べない部分がある。一般流通しない写真集を支援しても、この2000円では写真集自体は手に入らない。ムフフなチェキ写真が1枚とお礼動画が手に入るものの、少し物足りない。ただ、少し値段を上げると景色は大きく変わる。中間価格帯の2つを比べてほしい。
- 11000円プラン:写真集(サイン入り)+ドキュメントDVD
- 15000円プラン:写真集(サイン+宛名入り)+ドキュメントDVD+お渡し会参加券+ツーショット券(カメラはご用意ください)+本人挨拶+クレジット掲載
この4000円の差である。お渡し会に参加でき、クレジットに掲載され、ツーショットで写真が取れる、それが4000円というのは安いだろう。このあたりの価格設定が絶妙なのだ。価格差にあったリターン差、これができていない失敗事例が非常に多い。
3.1名限定:撮影監督になれるプラン
こういう飛び道具は他の写真集企画にない面白いコンテンツだ。支援者1名限定で、本田岬と一緒に打ち合わせ、衣装を選択し、最後には打ち上げにも参加できるという、まるで撮影監督になれるようなプランがある。そして、完成した作品は1部だけ、まさに自分のためだけに用意された写真集となる。と、このように成功するクラファン写真集企画には、それなりのメソッドが詰まっている。特段珍しいものも、目新しいものもないように見えるが、それができていないクラファン企画が多いのだ。本田岬の企画は、正攻法にしてセオリー通りの成功企画といえる。写真集の宣伝のためのようなギラギラしたものではなく、ファンのためにファンによって作られる写真集企画となったようだ。
後日談によると本田岬写真集お渡し会も、うまくいったようだ。やはり関係者によってギラギラした企画よりも、こうしたファン重視の企画が成功につながるのだ。