今年のアイドル写真集ランキングトップ10のうち9冊を独占したアイドルグループ、それが乃木坂46だ。AKBのライバルとして2011年に鳴り物入りでアイドル界に登場し、80年代アイドルに通ずる清純派アイドルとして今や圧倒的地位を占める。なぜ彼女たちの写真集だけが売れるのか、その理由を知ったとき、きっと乃木坂メンバーに恋をしているはずだ。
乃木坂46を知らない人のための乃木坂基本情報
正直いってAKBですら全員の名前知らないし、乃木坂46の全員の名前を覚えるなんて無理。ただ、グループとしての乃木坂46をまずしっておいたほうがいい。乃木坂基本情報をいくつかリスとしておいたので、乃木坂初心者はまず暗記。
- AKB48公式ライバルとして結成したアイドルグループ
- メンバーは変動性(昇格・卒業あり)
- 2011年結成
- 乃木坂48ではなく乃木坂46
- 女性向けファッション誌の専属モデルを務めるメンバーが多い
- AKBグループ(AKB48,SKE48..etc)とは別のグループ
- AKB48グループと違い専用劇場を持たず、舞台演技や個人MVに力点が置かれる
- ポジションは文化系女子のアイドルグループ(AKB48との差別化)
- 秋元康氏は、AKB48を「高校の芸能コース」、乃木坂46を「専門学校」、欅坂46を「高校の普通科」と表現
- 主要メンバーは、白石麻衣/西野七瀬/生田絵梨花/生駒里奈など
- 乃木坂は、最終オーディション会場のSME乃木坂ビルに由来
いま写真集業界のトップを独走する乃木坂メンバーによる乃木坂現象
2017年上半期のアイドル・タレント写真集ランキングを独占する乃木坂メンバー
さて90年代をピークに写真集業界は衰退し続けてきたわけだけど、ここ数年で盛り上がりを見せている。その原動力になっているのが「乃木坂現象」と呼ばれる乃木坂46メンバーのソロ写真集。例えば、2017年上半期の写真集売上ランキング(TSUTAYA調べ)を見てみると、トップ10のうち乃木坂メンバー9人がランクイン。まさに写真集業界を席巻しているといっても過言ではない。
ランキング | タイトル | 被写体 |
---|---|---|
1 | 『パスポート 白石麻衣写真集』 | 乃木坂46 |
2 | 『潮騒 齋藤飛鳥ファースト写真集』 | 乃木坂46 |
3 | 『話を聞こうか。 衛藤美彩写真集』 | 乃木坂46 |
4 | 『橋本奈々未写真集 2017』 | 乃木坂46 |
5 | 『秋元真夏ファースト写真集 真夏の気圧配置』 | 乃木坂46 |
6 | 『桜井玲香ファースト写真集 自由ということ』 | 乃木坂46 |
7 | 『風を着替えて 西野七瀬写真集』 | 乃木坂46 |
8 | 吉沢亮PHOTO BOOK 『One day off』 | |
9 | 『やさしい棘 橋本奈々未ファースト写真集』 | 乃木坂46 |
10 | 『生田絵梨花 1st写真集 「転調」』 | 乃木坂46 |
TSUTAYA・2017年上半期 タレント写真集ランキング
集計期間:2017年1月1日(日)~2017年6月30日(金)
別の調査、オリコンによる2017年上半期のランキングでも、写真集部門では20.1万部を売り上げた乃木坂46メンバー白石麻衣のソロ写真集「白石麻衣写真集 パスポート」を筆頭に、1〜7位を乃木坂46のメンバーが独占している。
2017年後半も乃木坂現象はまだまだ続く
さらに2017年の後半にかけて既に乃木坂メンバーの写真集発売が決まっており、まだまだ乃木坂現象は続きそう。11月と12月で発売予定の乃木坂メンバーは、若月佑美、新内眞衣、堀未央奈、与田祐希、松村沙友理の5名。既に先行予約が始まっており、前評判も高い。
また2017年10月2週目のオリコンランキングを見ると、つい先月発売された石原さとみ写真集や元AAAの伊藤千晃写真集などが上位にいるなか、今年2月に発売された白石麻衣のソロ写真集「白石麻衣写真集 パスポート」が第六位にランクイン。写真集は初動勝負な商品だけに、8ヶ月たってもランクインするとは白石麻衣のチカラ恐るべし。
写真集の乃木坂現象は4年前の『乃木坂派』から始まった
乃木坂46のファースト写真集は2013年発売の『乃木坂派』
乃木坂46が最初に出した写真集は、ちょうど6枚目のシングル『ガールズルール』が50万枚のセールスを記録したころに発売された。テーマは臨海学校。1期生メンバー32名が3日間にわたり、千葉の牧場での乳搾りや野外でのカレー作りなどに挑戦し、メンバーの寝起きシーンあり、温泉シーン といった学校ネタの写真集だ。
乃木坂の単独グラビア撮影が始まった2014年「早春、初夏、涼秋、彩冬」シリーズ
乃木坂派がグループとしてのファースト写真集であったのに対し、その翌年に発売した『季刊乃木坂』は、四季折々の季節の情景とともに単独グラビアでメンバーを綴るというテーマの写真集。
井上小百合、桜井玲香、中田花奈、中元日芽香、樋口日奈、若月佑美、和田まあや、北野日奈子
市來玲奈、衛藤美彩、永島聖羅、深川麻衣、星野みなみ、大和里菜、新内眞衣、堀未央奈
秋元真夏、伊藤万理華、齋藤飛鳥、斎藤ちはる、高山一実、畠中清羅、伊藤かりん、相楽伊織
生駒里奈、川後陽菜、川村真洋、斉藤優里、能條愛未、松村沙友理、佐々木琴子、渡辺みり愛
メンバー単独初の白石麻衣のファースト写真集『清純な大人』
巨匠篠山紀信がカメラマンを務めた乃木坂メンバー初のソロ写真集が、白石麻衣の写真集だ。数々のタレントやアイドルを撮影してきた篠山紀信が撮影したことで、名実ともにトップアイドルとして認められた記念碑的な写真集。篠山紀信いわく「アイドルを超えた! 」とまで言わしめた、芸術的作品と言われている。
白石麻衣に続いて、西野七瀬/橋本奈々未/生田絵梨花/生駒里奈が写真集を発売
白石麻衣のファースト写真集につづいて、2015年から2016年にかけて各メンバーのファーストソロ写真集が出揃ってくる。2014年の白石麻衣ファースト写真集に始まり、2016年までのほとんどのソロ写真集を出版していのが幻冬舎である(生田絵梨花だけ集英社から発売)。
ちなみに、幻冬舎は書籍全体の出版社ランキングでは10位に入らない中堅どころの出版社。2016年以降は乃木坂46写真集といえば幻冬舎の関係は崩れ、集英社、講談社、小学館など大手出版社からの写真集発売が相次ぐようになる。これは乃木坂メンバーが女性誌専属モデルとして活躍するようになっていたことが影響していると考えられる。
今世紀最大の売上を記録した写真集白石麻衣『パスポート』が登場
乃木坂のトップを、いやアイドル界のトップに躍り出たことを証明したのがセカンド写真集の『パスポート』である。乃木坂メンバーで一番最初に専属モデルに抜擢され、生駒里奈の後に初めてセンターに抜擢され、映画でキスシーンも披露し、そして『パスポート』では空前絶後のセクシーボディを披露し、乃木坂の認知度を国民的レベルにまで押し上げたといえる。
2017年の始めの出来事で忘れているかもしれないが、『パスポート』は10万部という桁違いの初版部数を記録しながら、発売前に2度も重版が決まるという近年まれに見る大フィーバー写真集だったのである。
2017年、乃木坂写真集ラッシュに突入
2017年に入ってから、白石麻衣のパスポート大旋風を引っさげて、乃木坂は躍進を遂げる。まず2月に橋本奈々未のラストとなる写真集『2017』、秋元真夏のファース写真集『真夏の気圧配置』、3月に桜井玲香ファースト写真集『自由ということ』、4月に衛藤美彩のファースト写真集『話を聞こうか。』、そして11月と12月は2カ月の間に怒涛の5冊出版という乃木坂現象真っ最中だ。既に発売が発表された与田祐希の写真集を含め、ソロ写真集はグループ16人目で19冊目なので、2018年もファースト写真集ラッシュが期待できる。
乃木坂46の発売順に並べるとこうなる
- 乃木坂派(2013/10)
- 白石麻衣「清純な大人」(2014/12)
- 季刊 乃木坂 「早春、初夏、涼秋、彩冬」(2014年季節号)
- 西野七瀬「普段着」(2015/2)
- 橋本奈々未「やさしい棘(とげ)」(2015/8)
- 生田絵梨花「転調」(2016/1)
- 生駒里奈「君の足跡」(2016/2)
- 深川麻衣「ずっと、そばにいたい」(2016/6)
- 1時間遅れのI love you.(2016/8)
- 高山一実「恋かもしれない」(2016/9)
- 西野七瀬 2nd「風を着替えて」(2016/9)
- 齋藤飛鳥「潮騒」(2017/1)
- 白石麻衣 2nd「パスポート」(2017/2)
- 橋本奈々未 2nd「2017」(2017/2)
- 秋元真夏1st「真夏の気圧配置」(2017/2)
- 桜井玲香1st「自由ということ」 (2017/3)
- 衛藤美彩1st「話を聞こうか」(2017/24)
- 与田祐希1st 写真集(2017/11)
- 若月佑美1st「パレット」(2017/11)
- 新内眞衣1st 写真集(2017/11)
- 堀未央奈1st 写真集(2017/11)
- 松村沙友理1st 写真集(2017/12)
乃木坂46をファッション誌で拝みたいなら、この雑誌
- 白石麻衣『Ray』『LARME』
- 齋藤飛鳥『sweet』
- 松村沙友理『CanCam』
- 西野七瀬『non-no』
- 川後陽菜『Popteen』
- 北野日奈子『Zipper』
- 堀未央奈『ar』
- 衛藤美彩『美人百花』
- 久保史緒里『SEVENTEEN』
- 桜井玲香『NYLON JAPAN』
なぜ乃木坂46の写真集だけが売れるのか
男子のアイドルオタクだけじゃない同性からの人気が熱い
白石麻衣を筆頭に齋藤、西野、松村といったメンバーが女性ファッション誌の専属モデルとして活躍し、「女子高生が入りたいアイドルグループランキング」で1位を獲得するなど、同性支持層が非常に厚いのが特徴的だ。男子諸君からのアイドル的な魅力と同時に、オシャレでハイセンスなイメージづくりが対AKBグループとの大きな差別化となっている。
AKBモデルの終焉と、グループ(組織)力の乃木坂・欅坂の活躍
1980年代には松田聖子や中森明菜が絶大な人気を博し、1990年代はモーニング娘。が社会現象になるなどどの世代にもアイドルはいた。しかし、栄枯盛衰はアイドルの世界では当たり前。AKB48は、かつてのアイドルのように偶像化せずに「会いに行けるアイドル」として売り出して社会現象を生み出した。
Googleトレンドで見るAKB48と乃木坂46の人気度推移
また、総選挙のような議決権方式、SKE48のような支店化といったビジネス化もAKBスタイルと言える。しかし模倣するアイドルは有象無象に生まれ、衰退期に入ってきている印象も受けるまた、そこから派生してBABYMETAL(アイドル+メタル)や、ももいろクローバーZ(アイドル+芸人)など、純粋アイドルではないハイブリッド型がヒットする傾向にある。
一方で、乃木坂46はどうなのか。同じアイドルであるが、メンバー個々の個性は限りなく抑えてグループとしてのブランディングを重視していると考えられる。乃木坂46ファンには、メンバー推しではなく、グループ自体を応援する「箱推し」するファンが相当数いると思われる。
グループとして一気に名を広げてから、個別のメンバーがファッション誌の専属モデル化、また写真集といった周辺ビジネスで需要を汲み取るようなサイクルである。ある意味、1970年〜1980年代の「清楚・清純な美少女」「穏やかな優等生」アイドル全盛期へ原点回帰しているような印象だ。
乃木坂現象の後に訪れる不安
グループ活動を重視し、ドラマやバラエティといったメンバー個々の活動が制限されているメンバーたち。新たな二期生や三期生を投入すれば、穏やかな優等生グループは存続できる。しかし、これから歳を重ねる第一期生の未来に何が待っているだろうか。バラエティの側面から見るとAKBメンバーと違って、清楚だからこその扱いづらさがあり、同じ方向には向かえないだろう。写真集が売れているのは、写真集くらいしか個々の活動の場が限られているというジレンマなのかもしれない。