吉岡徳仁が巷でどれだけ有名なのかは知らないのだけど、私が知ったのはつい半年前くらい。中国の動画サイトにドキュメンタリー番組「情熱大陸」が無数にアップされてるので、その中で写真家や芸術家の回を探していたときに見つけて視聴したのが初めての出会い。
パソコンで出来る作品は平坦であり再現できるものだから興味が無いと言っていたのが印象的。私はプロたるものは、常に一流の作品、技術、サービスをいつ何時でも再現するものだと考えているので、再現性に頼らない唯一性にあるプロフェッショナル性は新しい視点だった。だからといって、吉岡徳仁の名前だけでピンとくるほどの記憶力は備えていないので、それっきり忘れていた。
今回、上海で暇だから美術館を巡ってみるかとネットでイベントを探していたらカルティエ展が開催されてのを知った。カルティエブランドくらいは知ってたし、時計も1度はつけていた時期もある。だいたい上海の美術館や芸術展は撮影NGなことが珍しいくらいだから、今回も時計でも撮影してみるかと思ってバイクを走らせた。
吉岡徳仁とカルティエ展が開催されているのは、中国最大級の現代アート美術館である当代芸術博物館。最近は毎週博物館を巡っているわけで、なんとなくインテリジェントな自分に酔いしれながら、炎天下で汗だくになりながら到着した。博物館と美術館とその差も分かってない時点で全くインテリジェントじゃないんだけど、20RMB(300円前後)を支払ってギンギンに冷えたインテリジェントなカルティエ展コーナーへと足を運んだ。
ちなみに、この博物館は2012年10月にオープンしたそうだ。2010年上海万博開催時に城市未来館として結構人気があった。旧南市発電所をリノベーションした複雑な構造の建物が特徴で、巨大煙突が立っていたり何やらアートな感じがムンムンしている。来場者も偽物か本物か知らないけどオシャレな時計を身にまとって、カルティエの時計をiPhoneで撮影しまくっていた。
やっぱりここは中国だと感じてしまったのが、ショーケースの指紋の多さ。ベタベタベタベタ触りまくってるから、写真なんか撮れないくらいに油ギッシュなショーケースになってる。警備員も全く気にしてないから、触り放題。吉岡徳仁は、こんなことを予想してたのだろうか、本来きらめくはずの時計たちが曇ってしまって光沢が半減してる模様。
このカルティエ展は、カルティエのコレクションの中から、選りすぐりの時計を紹介する巡回展「Cartier Time Art – Mechanic of Passion 」であり、過去最大数のコレクションが一般公開されていると聞いた。
151点のクラシカルコレクションに始まり、20のムーブメント、16点のメティエダール、カーボンクリスタルを特徴とするニオブチタンのID Oneのコンセプトウォッチを含む15のモダンピースまでが揃い、カルティエウォッチコレクション過去最大数の一般公開が実現されている。
これがプレス用の案内文なんだけど、横文字の意味がさっぱり分からないし時計のことを言ってるかどうかも定かじゃない。でも、きっとすごい巡回展なんだろうし、吉岡徳仁ディレクションということで日本人としても何やら嬉しい気分になれた。カルティエの作品はそれはそれで美しいものだったが、それより吉岡徳仁の作品は、実際に見るのは初めてだったので非常に感動した。
いい写真を撮るには、やはり芸術に触れ続けることが重要な要素だと思う。いい料理人はいい料理を食べることが一番の修行だとどこかの料理人が言ってたように、いい写真かもいい写真や芸術に触れてこそ、その良さを自分で実現しようと思うはずだ。
この展示会での一番の収穫は、カルティエの代名詞のタンクウォッチはパリ開放を記念して、戦車の形状を模して製作されたという事実を知れたこと。