初めてデジタル一眼レフを購入するなら、広角域から望遠域までカバーしたズームレンズキットを手に入れる事が多いのではないでしょうか。風景を広々と写す広角から、遠くのものを大きく写す望遠域までカバーした高倍率ズームレンズは旅行や日常スナップ撮影では重宝しますし、1本で2役も3役もこなすので利便性は抜群です。
ただ、高倍率ズームレンズしか持っていない人が、もし単焦点レンズを手に入れたら100%その「描写力やボケ」を堪能できます。劇的に写真を変えるにはズームレンズに加えて単焦点レンズを手に入れるのが最短の道です。さらに単焦点レンズはズームレンズと違って自分の足で構図を決めることになるので、いつのまにか画角が自然と身につき写真が上手くなってるはずです。
「一眼レフっぽい写真」ってありますよね、背景がボケた写真。これは単焦点レンズの得意領域で、ズームレンズで撮れないかといえば撮れるのですが、いつでもどこでも一眼レフっぽい写真を撮るには単焦点レンズの出番です。単焦点レンズを1本でも持っていれば写真が劇的に変わりますし、いつもは気づかない被写体と向き合う良い機会になると思います。
単焦点レンズって何だろう?
焦点距離が固定のレンズを指し、ズームレンズのようにレンズをクルクル廻して伸び縮みすることもなく、ファインダーから見える範囲は常に一定です。つまり撮影する範囲を変えるには、自分で一歩近づいたり一歩下がったりして画角を決める必要があります。従って、レンズを廻せば簡単に撮影する範囲を変えられるズームレンズの利便性は全くありませんが、それでもそれに勝る描写力や写真の楽しみが待っています。
単焦点レンズの魅力は?
写真が上達すると言われている
ズームレンズと違って、画角は常に一定です。もっと広角で撮りたい、もしくはもっと望遠で撮りたいと思ってもレンズに頼ることはできません。自分の足で動きまわり、しゃがんだり背伸びしたり一歩下がったり近づいたりします。最後の一歩で、ズームリングを指だけで操作するのと違った迫力のある写真が撮れるわけです。さらには、何度もその単焦点レンズで撮影していると、そのレンズの画角が身についてファインダーを覗く前に映る範囲やアングルが自然と身についてるようになります。
趣味としての撮影が楽しくなってくる
背景がボケて被写体がくっきりと写り、なんとなく写真が上手くなったような気がするのが単焦点レンズのいいところです。F値をいじったり、被写体との距離を前後させることでいろんなボケ写真が撮影できます。ボケのコントロールがうまくいけば、スマホやコンデジでは撮れない綺麗な作品がたくさん撮れることでしょう。
また慣れてくれば被写体との距離感や映る範囲の感覚が身についてきます。通りすがりの街中でもあっと思った写真が、そのままイメージした通りの写真に仕上がることはまちがいありません。この感覚は、ズームレンズでクルクルしてるようでは絶対に身につきません。自分の足で被写体との距離をコントロールすることで、写真の楽しさオモシロさが倍増します。
ピンぼけした写真が劇的に減る
キットレンズを使った場合、走り回る子どもを撮影するときや、室内や夕暮れ時に撮影したらブレた写真が量産された経験はありませんか?これはカメラが取り込む光の量が少ないのが問題なのです。カメラを取り込む量が少ないなら、取り込む時間を長くする必要がでてきますので、その間に被写体ブレか手ブレが発生しやすいのです。
絞り値で比較すると、キットレンズのF値はF3.5-5.6程度で、単焦点レンズはF1.4やF1.8が中心です。F値が小さい単焦点は明るいレンズ、つまり単焦点レンズのほうが光の取り込む量が多いということを意味しています。単焦点はこのF値のおかげで、室内でも夕暮れ時でもシャッタースピードを稼ぐ事ができるので、ブレない写真が撮影できるわけです。ピンぼけが減るには単焦点レンズに頼るべきなのです。
ズームレンズとの違いは?
撮影技法ではなくメカとしてのズームレンズと単焦点レンズの違いについても理解しておくことは、レンズ選びにおいて大いに役立つことでしょう。ズームレンズと単焦点レンズの違いは大きく3つあります。これはズームレンズに比べた単焦点のメリットとも言い換えることができます。
- ズームレンズよりレンズの構成がシンプルなため、小型で軽量であることが多い
- ズームレンズより開放F値が小さい(F値が1.4や1.8)
- ズームレンズより最短撮影距離が短いため、近くに寄って撮影できる
単焦点レンズの欠点は?
単焦点レンズも万能レンズというわけではありません。高い描写力や明るいF値を手に入れる代わりにいくつかの欠点もあります。
- 被写体に寄る離れるは、全て自分の足を使う必要がある
- 被写体によってはレンズを複数揃える必要がある(35mm,50mm,85mm,105mm等)
- 被写体によっては毎回レンズ交換をする必要がある
ただし、自分の足で焦点距離を変更させる事は、写真上達のために必要なプロセスでもあるので必要不可欠な欠点ともいえます。また、全て単焦点で揃える必要はなく、50mmだけ単焦点を揃えて他の焦点距離はズームレンズでカバーする人も多いです。
単焦点レンズかどうか見極めるポイントは?
そのレンズが単焦点レンズかズームレンズかを見極めるにはレンズ前玉(被写体に近い側)に書いてある数字を見ればわかります。
この数字が、50mmや30mm など1つの数字だけならそれは単焦点レンズです。ズームレンズは16mm-85mmなど焦点距離の範囲が書いてあります。また、そのお隣にF値も書いてあるはずです。このレンズは1:1.8 Gとありますが、この1.8という数字がF値であり明るさの単位です。単焦点レンズはF値は固定であることも特徴です。
単焦点レンズはどこで売ってるの?
単焦点レンズは決して珍しい商品ではなく、家電量販店やネット通販等どこでも手に入る商品です。また、一般的な単焦点レンズはニコンやキヤノンを代表するカメラメーカーからも、シグマやタムロンといったレンズ専門メーカーからも発売されているので選択肢も非常に多いです。
単焦点レンズはどんな時に使うの?
小型で軽量であることが多いため、常用レンズとして日常から大活躍すること間違いなしです。特に力を発揮するのは、早朝や夕暮れ、室内など太陽光が届かないような薄暗い場所や時間帯です。そんな時はズームレンズから単焦点レンズに切り替えてF値を1.8や2.8など数字を低くして撮影してみてください。
ズームレンズではピンぼけが量産されるシチュエーションでもスムーズに撮影できるはずです。どれだけ安い単焦点レンズでも、キットレンズと比較すれば描写性能は一つ飛び抜けているはずです。どうしても便利なズームレンズを持ちだしてしまいがちですが、単焦点レンズ1本しかない状況を作って写真を撮り続ければ必ず写真は上達します。
単焦点レンズは安い?
例えば同じ50mmの単焦点レンズでも、下は1万円から上は40万円までと価格差は大きいです。ただ、同じ焦点距離をカバーするズームレンズに比べれば安い傾向にあります。例えばこのキヤノンの「撒き餌さレンズ」と呼ばれる50mmの単焦点レンズ。実売価格1万円を切っています。ニコンは2万円で50mm f/1.8 Gが手に入ります。
「EF50mm F1.8 II」は、1万円を切る価格で購入できる点がウリの小型・軽量な標準レンズで、キヤノンユーザーはこのレンズからレンズ沼にのめり込むと言われているとか。値段が安いことも手伝って常にレンズ販売ランキングに顔を出すほど人気のレンズです。プラスチックボディーでモノとしては高性能とは言いがたいですが、初めての単焦レンズとしてはオススメできるものです。
どの単焦点レンズが初心者に向いてる?
初心者に向いている「初めての単焦点」に最適なレンズを3本ほどご紹介します。初めての単焦点でも入手しやすい価格で、現行品で、キレイな写真が撮れるものをニコンカメラとキヤノンカメラからピックアップしました。
初めての単焦点 NIKON編
- AF-S NIKKOR 28mm f/1.8G
- AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G
- AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G
初めての単焦点 CANON編
- EF 50mm F1.8 II
- EF 50mm F1.4 USM
- 28mm F1.8 EX DG ASPHERICAL MACRO(SIGMA製)
単焦点レンズに限らず、レンズは純正とサードパーティ製があります。カメラ本体のメーカーが製造するレンズを純正レンズ、レンズ専門メーカーが製造するレンズをサードパーティ製レンズと言います。前者は例えばニコン、キヤノンであり、後者はタムロン、シグマ、カールツァイスといったメーカーです。
傾向として、サードパーティ製レンズのほうが安いです。特に、シグマのARTシリーズのような最新レンズラインナップは純正のレンズ性能と同等かつ値段が安いと評判です。また、ニッチな焦点距離や特徴をもった製品もサードパーティレンズの醍醐味ですので、たくさんのレンズで遊んでみましょう。
単焦点を買ったらズームレンズはもう要らない?
単焦点レンズを買ったからといって、ズームレンズの出番が無くなったわけではありません。どうしてもズームレンズでなければ撮影できない場所もありますし、海外旅行に単焦点レンズを何本も持っていくよりはズームレンズ1本を携行したほうが旅行に集中できます。
私も、旅行以外では単焦点レンズを1本だけで撮影する機会を増やしました。撮影すればするほどそのレンズで撮れる範囲が自然とみにつき、思ったとおりの写真が撮れる確率がぐっとアップしました。 そして、35mmの単焦点の次は、50mm、85mmとレンズの物欲がどんどん湧いてきて困っている今日このごろです。